善く行くものは轍迹なし
定本「老子道徳経」の読み方 早島天來編より 人生を最高に生きる老子の言葉 第三十一回
★人生の本当の価値は形に残らない
私達もある年数を重ねてくると、その人生について立ち止まって考える時があります。そんな時に、たいてい自分の人生を評価する基準はまず結果として今なにを手にしているか、何を残せたか、という事になりやすいものです。地位や名誉やお金をたくさん手にしている人は意義ある人生だったと考え、それがあまりないと、たいした人生ではないと評価しやすいものですが、本当にそうなのでしょうか。老子は教えています。目に見える形で残らない、余りに自然に名前も記録も残らない行動こそが善なる行いであるのですよ、と。
そしてそんな善行を重ねている人は、確実に天からの恵みをうけて心豊かな人生を過ごしておられることでしょう。
★人生を豊かにする小さな実践
生涯現役の人生をより豊かにするためにすぐ出来る、そしてとても意味ある努力は、この目にみえない、形も残らない善なる行いを心がける事なのではないでしょうか。職場や家庭で、毎日のあたりまえの食事やお茶の時間の会話を、もう少し大切にしてみる。笑顔で「そうだね、わかる、わかる」そんな共感のさりげない一言が、最近なんとなく壁が出来ていたあの人とのコミュニケーションの糸口となり、夕食後の片付けを夫婦仲良く協力する事で、今日も一日ご苦労様、明日もよろしくのメッセージとなる事でしょう。大げさでなく、さりげないこの実践こそが、確実に心と体を陽気にし、若返り、生涯現役の楽しい人生につながるのです。庭に咲いた春の花に心を癒やされるように、自然に笑顔がこぼれる心持ちで過ごせるように、気負わず行う小さな実践こそが、老子が教える人生を変える秘訣なのです。
- 1
- 2